昔から身近な存在として日本人に愛されてきた葛の花

葛はマメ科の植物で、つる性の多年草です。原産地は日本、中国等を中心とする東アジアです。日本各地の山野に自生しています。葛の花は8月から9月にかけて、赤紫色の密集した房状の花を咲かせます。生命力が強く、真夏には蔓は1日で1mも伸びるとの話もあります。蔓を周りの木々に巻き付けて繁茂します。花言葉は「恋の溜息」、「活力」、「治癒」等ですが、葛が持つ生命力の強さやしたたかさを思わせます。

葛の花は、秋の七草の一つとして数えられ、昔から日本人に愛されてきました。万葉の昔から、歌に詠まれて愛されています。山上憶良は、「萩の花 尾花葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝顔の花」と詠んでいます。明治から昭和にかけての有名な俳人である高浜虚子も、「葛の風 吹き返したる 裏葉かな」と詠んでいます。葛の別名を「裏見草」といいますが、これは葉の裏面の白さが目立つ事からきています。「裏見」を「恨み」にかけた機知に富む和歌も詠まれています。新古今和歌集には、和泉式部が「秋風は すごく吹けども 葛の葉の うらみがほには 見えじとぞ思ふ」と詠んだ歌があります。

また、葛は鑑賞だけでなく、食料や医薬品の材料として、布などの日用品の材料として身近に日本人に利用され、愛されてきました。葛餅や葛切りを作る葛粉は、葛の根のデンプンからできます。漢方薬である葛根湯は、葛の根を乾燥させたものを原料としています。葛の蔓は、葛布の材料となります。大井川葛布、掛川葛布等が有名です。